「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信!

金融が変われば、社会も変わる!

トレンドを知る

日本経済を支える中小企業 その成長のカギとは

画像

中小企業が日本の重要な経済主体であることは多くの方がご存知だと思います。そんな日本経済を支える中小企業には、市場や地域経済の状況の変化により、成長を阻害する要因がとても多いのが現状です。そこで、NTTデータでは中小企業の課題を解決し、成長に寄与するサービスのポイントを抽出するために、アンケートとインタビューを用いて中小企業が抱える課題について調査しました。本稿ではその内容を少しご紹介します。

日本経済を支える中小企業

中小企業は日本の全企業数の99.7%を占め、雇用の約7割、付加価値の過半数を担うとともに、イノベーションの担い手として日本の重要な経済主体となっています。

【図1】企業数・従業員数・付加価値額に占める中小企業の割合

中小企業庁『2020年版 中小企業白書 小規模企業白書』

また地方のみに着目してみると、地方の大半の地域で8割以上の従業員が中小企業・小規模企業に勤務しているという実態もあり(※1)、地域の産業と雇用を支えています。

このように位置づけられているので、中小企業のさらなる成長をはかることは地域活性化の観点からも極めて重要な課題となってきています。

(※1)中小企業庁「中小企業・小規模事業者の現状と課題」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/download/161031kihonmondai04.pdf

中小企業を取り巻く課題

中小企業の成長は非常に重要なものとなっている一方で、中小企業の成長を阻害する課題は多いです。以下に代表的な例を記します。

人財不足

日本では総人口及び生産年齢人口が減少していることは言うまでもありません。この減少傾向は将来にわたって継続すると見込まれており、人手不足は日本全体で問題となっています。それに加え、新卒者の就職先としては依然大企業の人気が高く、中小企業にとって人財確保は重要な課題となっています。

以下は業種別従業員数過不足DIの推移です。業種別従業員数過不足DIとは従業員の状況について、過剰と回答した企業割合から不足と回答した企業割合を引いたものです。現在すべての業種で従業員過不足DIがマイナスになっており、人財不足感が強いことがわかります。

【図2】業種別従業員数過不足DIの推移

中小企業庁『2020年版 中小企業白書 小規模企業白書』

労働生産性の低さ

続いて労働生産性についてです。
以下は従業員1人あたりの付加価値額(労働生産性)を示したものとなります。大企業はリーマンショックにて激しく落ち込んだ後、緩やかに回復していることがわかりますが、中小企業は横ばい状態が続き、大企業との差は徐々に拡大しています。人財不足が加速している中、企業の維持・成長を保つには労働生産性を高めることが重要になってきます。

【図3】企業規模別従業員1人当たり付加価値額の推移

中小企業庁『2020年版 中小企業白書 小規模企業白書』

後継者不足

中小企業では人財不足だけではなく、後継者不足も深刻な問題となっています。以下は社長年齢別にみた後継者の決定状況になります。70代の経営者の約4割は後継者が不在の状況です。全国の経営者が高齢化している事実がある一方で、経営者の年齢が高い企業でも後継者が決まっていない現状から、多くがそのまま廃業してしまうケースが考えられます。

【図4】社長年齢別にみた後継者の決定状況

中小企業庁『2020年版 中小企業白書 小規模企業白書』


中小企業が成長するためのポイント

これまでご紹介した課題以外にも、多くの課題が中小企業を取り巻いています。それらの課題は、少子高齢化や労働力人口の減少、グローバル化の進展など、社会・経済構造の変化の中で、ますます多様化しており、画一的に把握した課題を解決しても、成長には繋がらないのが現状ではないでしょうか。

その背景を基に、我々は、中小企業経営者を対象に、中小企業が抱える課題についてのアンケートとインタビューを実施しました。そこから中小企業の成長のポイントとして、アンケート、インタビューのそれぞれの観点から2つの示唆を得ています。

<ポイント1>
アンケート結果の分析では公知情報でもよく用いられる業種、創業年数、エリア、企業規模の4つの切り口で中小企業をセグメンテーションし、それぞれをさらに中小企業の成長を表す指標として売上の動向(プラス傾向、横ばい、マイナス傾向)でセグメントし、分析しました。

【図5】アンケート分析におけるセグメント軸

【図6】アンケート結果からの示唆の例:エリア(中都市)における売上動向別の課題の傾向

このように売上の動向をセグメントの切り口として追加すると、4つの切り口によるセグメントだけでは見えづらかった課題の内容が詳細に明らかになっています。中小企業の成長を支えるためのサービスには、多種多様な中小企業に最適化することが重要であり、そのためには、複数の特性の視点からセグメンテーションし、課題を鮮明にすることが必要であることがわかります。

<ポイント2>
一方、インタビューの分析では、定性調査ならではの軸を用いてセグメンテーションしています。経営者の経営に対する発言・姿勢から「経営力」を推測し、セグメンテーションの軸の1つとしています。もう一方の軸は中小企業の成長として「売上規模」を用いています。この2軸で中小企業を見てみると、「経営力」と「売上規模」の違いで課題の傾向が異なる4つのグループが見えてきました。

【図7】インタビュー結果からの示唆(経営力と売上規模の違いによる4つのグループ)

4つのグループにおける課題や経営者の行動を比較すると、経営力が高いグループほど、より積極的に情報収集し、そのためのつながりを維持・拡大している傾向がありました(図8の①)。

また売上規模により、育成観点の違いがあることも見えてきています(図8の②)。中小企業の成長には「情報収集とそのためのつながり」と「育成」がポイントになるのではないかと考えられます。

【図8】経営力と売上規模の違いからみる成長のポイント


さいごに

本調査はNTTデータの金融領域で事業創発に取り組む方々向けのラボ「SPLAB™(スプラボ)」のUXリサーチャーとNTTデータ 金融事業推進部 法人データ利活用チームとの共同企画として実施しました。

SPLABでは、「手法」「人財」「情報」「場」の提供を通じて、お客様の社会課題を起点としたビジネス/サービス創発を支援しており、その中でユーザを深く理解するための調査としてUXリサーチを組み込んでいます。また、法人データ利活用チームは、ミッションであるデータを活用した新サービス・オファリング創発の1つとして、「中小企業支援サービス」を企画しています。

法人データ利活用チームが実施する中小企業支援サービスの企画にSPLABのUXリサーチの知見を加えることで、ユーザの背景まで理解した上での課題把握と分析を可能にし、よりユーザのニーズを捉えたサービスとすることを目的としています。今後も両チームで連携しながら、社会課題、中小企業支援等をテーマに、真に利用されるサービス創発を目指し取り組んでいきます。

本調査や取り組み内容にご興味のある方はお気軽にお問合せください。
中小企業の成長を支えるために金融機関が果たす役割について、こちらの記事もご参考ください。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の組織・役職名は制作当時のものです。
画像

執筆 藤原 枝里奈

NTTデータに入社後、電子マネーに関する開発や営業として従事した後、金融分野のお客様に向けたUX/UI、デザイン手法を軸とした提案開発支援を実施。現在はSPLABにて社会課題を起点として新規ビジネス/サービス創発の支援に従事。SPLABにて運営しているコ・デザイン・コミュニティ「DX LOUNGE」では社会課題の要因の深化探索ワークを企画・実施し、社会課題解決となるビジネスアイデアの発掘に取り組んでいる。

感想・ご相談などをお待ちしています!

お問い合わせはこちら
アイコン