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挑戦者と語る

先駆者たちと語るWeb3 ~最新動向とその先にある可能性とは?~

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インターネットの新時代を象徴する「Web3」が注目を集めており、世界のメガテック企業による巨額投資やサービス検討の動きは今後さらに加熱していくことが予想されています。そんなWeb3のトレンドに興味のある方も大変多いと思いますが、今回はその分野の先駆者として、不動産業界でのテクノロジー活用(Proptech)に挑むデジタルベースキャピタルの桜井さん、デジタルトークンNFTを活用したゲーム開発で注目されるCryptoGamesの原田さん、デジタルコンテンツの資源化に取り組むNTTデータの長谷部さんを直撃!Web3を取り巻く最新動向を伺う中で、リアルな社会との関係や地方創生における可能性が見えてきました。

本記事はNTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2022年7月25日に開催したウェビナー「API gallery Meet UP ~ Vol.8 “Web3×金融=?”」の内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定については以下のリンクをご覧下さい!

Web3などに取り組む事業者から見たトレンド

青柳さん 近年Web3というキーワードが急速に浸透しています。「3」とあるように、これまでのインターネットの歴史は「1.0」「2.0」を経て現在に至っています。

Web1.0の時代は限られた人が情報発信し、それ以外の人は情報を受け取るかたちの一方通行のインターネットとも言え、テレビなどのメディアに似た特性がありました。

それがWeb2.0の時代になると、ブログやSNS、YouTubeのような個人同士による双方向の情報発信が流行しました。しかしながら、情報・データの多くはいわゆるGAFAなどの巨大プラットフォームに帰属し、それを運営する企業のビジネスに活用されるといった構図になっていました。

Web3の時代では、NFT(※1)やDeFi(※2)を含めた分散型の技術などにより、個人が情報・データを管理・活用する流れが起きています。プラットフォーマーから個々のユーザーに、情報・データの所有権が移っていくことが想定されていますね。
(※1)NFT:Non-Fungible Tokenの略。資産のコピーが可能であるデジタル空間においても、ブロックチェーンにより唯一無二のデジタルアイテムを担保することができ、希少性による価値を保つことができる。
(※2)DeFi:Decentralized Financeの略。中央集権的な管理者のいない、ブロックチェーンなどを活用した分散型の金融システム・サービスのことを指す。
桜井さん そうですね。加えてWeb3では、リアルの世界における価値をデジタルにシフトさせていく動きがあることにも注目しています。分散型技術というと、ここ5年間くらいでいわゆる仮想通貨が流行り、ユーザーや資金が一気に流入しました。価格の乱高下もあり投機的な向きも強かったのですが、最近は潮目が変わっています。

例えば、分散型技術を美術品などに適用し、NFTと結びつけることで、リアルな世界にあるものにデジタル的にやり取りできる価値を持たせることが可能になりました。これは、さまざまな分野に応用できると思います。例えば、現地に足を運ばなければ体験できないような地方ならではの商品・体験などを、世界中に流通させ、知ってもらうきっかけにもなるでしょう。

青柳さん デジタルベースキャピタル社では、不動産業界におけるリアルな価値のデジタルシフトに取り組んでいると伺いました。
桜井さん 現在、不動産業界ではリアルな価値をデジタルシフトする流れが活発になっていて、当社は、“Proptech”(※)に取り組んでいます。これまで不動産取引は、法規制により電子取引ができませんでしたが、本年5月に法改正があり、ついに電子化が可能になりました。

これにより、さまざまなデータを集めやすくなり、よりお客様のニーズに合ったかたちでの不動産購入時の融資、保険などの付随サービスの再構築が必要になってきています。当社はこのような業務にテクノロジーを活用することで、不動産業界の業務効率化・高度化に取り組んでいます。
(※)Proptech:プロパティ(不動産)×テクノロジーを意味する言葉であり、不動産業界でのDXを表す。従来の不動産業務にITなどを導入することにより、業務の効率化や高度化などを図るもの。
青柳さん リアルな世界の価値をデジタルにシフトしていく上で、NFTは欠かせない要素の1つだと思います。ブロックチェーンゲームやNFT関連サービスの開発を行うCryptoGames社では、どのようなことに取り組んでいらっしゃいますか。
原田さん NFTを活用した「NFTAirdrop」というサービスでは、一例として、三重県明和町の竹神社で、スマホを利用したデジタル御朱印の実証実験を実施しました。御朱印だけではなく、周辺でランチを食べたり、宿泊施設を利用したりと、いろいろな経済活動を起こすことを狙いとした取り組みです。

そうした活動がインターネットなどで話題になって波及していけば、プロモーション効果や、新たな価値を創出するきっかけとなっていくことも期待できます。NFTにより、これまで紙では実現できなかったいろいろなサービスに挑戦できるようになると思います。

青柳さん NFTと地方創生も親和性が高そうですよね。

リアルな価値をデジタルにシフトする。長谷部さんは、あらゆるデジタル資料を扱えるアーカイブサービス「AMLAD」を推進されていますが、同じような観点でのお取り組みはありますか。
長谷部さん 「AMLAD」は、博物館・図書館などが保有する書籍や文献、音声・動画といったあらゆる資料をアーカイブするサービスであり、さまざまな文化遺産や美術品を含めた貴重なコンテンツのデジタル化、保全や公開、検索の仕組みを提供することを目的としています。

海外では、バチカン図書館のデジタルライブラリや、ASEAN統合デジタルアーカイブ「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive」などを提供しています。絵や書簡など含め、実際に所蔵されている貴重な文献を手に取るように見ることができ、拡大縮小などもできますし、博物館所蔵物の3Dデータ化も行っています。また、国内でも例えば、石川県立図書館のデジタルアーカイブ「SHOSHO ISHIKAWA」を構築していて、一般書籍のみならず、地域の文化遺産などもデジタル化して公開しています。

電子化やWeb3進展により生まれる新たなユースケースなど

青柳さん 先ほどProptechが進展しつつあることや、Web3と不動産業の掛け合わせが盛り上がりつつあるというお話を伺いましたが、どのような事例があるのでしょうか。
桜井さん 賃貸取引には大家さんや入居者を含め多くのプレーヤーが関わりますが、規制緩和の影響で大きな変化が起きています。例えば、イタンジ株式会社が運営するリアルタイム物件管理システム「ITANDI BB」や、オンラインでスムーズに引っ越し取引ができる不動産ポータルサイト「OHEYAGO」などでは、仲介的なプロセスが激減し、従来よりも大幅に簡単に手続き・契約が可能になっています。
青柳さん 複数のプレーヤーが関わる不動産取引では、効率化の余地が大きいと感じますね。Proptechは海外でもいろいろな取り組み事例があると聞きました。
桜井さん 海外では、不動産取引の電子化がすでに浸透しています。米国の企業Opendoorでは、個人から不動産を買い取って転売・再販するビジネスを展開しています。AIによるオンライン査定で即座に買取価格を提示することにより、買取・現金化までの期間を短縮し、ユーザーが即座に現金を手にできるようにしている点が特徴です。また米国では、ブロックチェーン上で不動産取引のプロセスを記録する取り組みも進んでいて、例えばRentberryという企業は、ブロックチェーンによる分散型賃貸住宅プラットフォームを提供しています。
青柳さん 米国を中心に海外ではProptechによる不動産取引の効率化・高度化が進んでいるのですね。不動産業とメタバースの関係性についてはいかがでしょうか。
桜井さん 米国などを中心にメタバース上での不動産取引も活発になっている印象です。リアルの世界での不動産売買のようなことが、デジタル・ゲーム上でなされています。リアルの世界でもデジタルの世界でも、人が集まる場所でいろいろなサービスが誕生していくのは共通なのだと感じました。

オンライン上でイベントをやるためにメタバース上の土地の利用券を購入するとか、メタバース上の建物にアートや広告のNFTを絡めるといったビジネスが展開できるという期待感もあります。

最近では、不動産の所有権をNFT化して取引できるようにしようという動きもありますね。NFTのメリットは、二次流通以降の取引時にオリジナルの製作者や所有者がインセンティブを得られる仕組みにあります。この部分がデジタル化すると、資金調達や決済など、周辺にある金融へのニーズが生じてくるので、金融機関においてもチャンスがあると思います。
青柳さん メタバースとのつながりという意味では、デジタルコンテンツのアーカイブ化を行うAMLADではいかがでしょうか。
長谷部さん まさに議論を進めているところです。デジタルコンテンツの保全や公開、検索の仕組みには長らく取り組んできましたが、コンテンツデータのビジネス活用は、これからです。XR・VR・ARといった技術によるデジタルコンテンツの新たな鑑賞体験の創出や、NFT・ブロックチェーンによる流通・マネタイズなどを企図して「AMLAD Metaverse Initiative」という取り組みを進めています。
例えば、日本、バチカンやASEANのコンテンツを一堂に集めたバーチャル上の博物館を構築して、リアルの世界ではできない新たな鑑賞体験を構築できれば面白そうですよね。2020年ドバイ国際博覧会では、バチカン市国と連携して出展し、16世紀の天文台「Gregorian Tower」を3Dデジタル化し公開しました(https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2021/100801/)。
また、当社イベント「NTT DATA Innovation Conference 2022」では、3Dデジタルデータを用いて、タワーに立っているかのようにプレゼンしたり、バチカン図書館長と3D上で対談を実施したりしました(https://www.youtube.com/watch?v=GNNUgG9L0zc)。

地方創生におけるメタバースやNFTの役割など

青柳さん 皆さんのお話を伺うと、メタバースやNFTはもちろん、Web3という概念自体に、地方創生と親和性があるように感じますね。

桜井さん そうですね。Web3は、地方・地域にとって大きなチャンスをもたらす潮流だと思っています。Web3を支える技術は住んでいる場所に関係なく活用できますし、実際、地方創生とWeb3を絡めたオンラインイベントを開催すると、若者を中心に非常に多くの方が関心を持ってくれています。

地域でも、NFTや仮想通貨を用いて世界中からユーザーや資金を集めることができるようになります。逆に言うと、リアルだからこそ発揮できていた優位性はどんどんなくなっていきます。自分たちの地域の資産・コンテンツに気づき、ユーザーを呼び込むことができなければ、他の地域にユーザーの関心や資金を奪われてしまいます。

昨今ふるさと納税により、東京都などの大都市から、魅力的な商品やコンテンツを持つ地方へ税収が移転していることが話題になっていますが、それに近いですね。
原田さん 誰しも生まれ育った地域、故郷には思い入れがあり、地域とのつながりを失いたくないという気持ちを持っていると思います。他社の事例ですが、新潟県の旧山古志村では、自治体などの協力のもとデジタルアートプロジェクトが実施されました。

錦鯉の発祥の地でもある山古志地域では、2004年の中越大震災で大幅に人口が減少してしまったことを契機に、村の存続、知識継承の懸念が高まりました。そういったなかで、錦鯉をシンボルにしたNFT「Colored Carp」の発行を通じて、グローバルな関係人口を創出することができたと聞いています。

他の地域の神社と連携して、たくさんの御朱印をNFTで入手できるようになれば、全国旅行にもつながるかもしれませんね。NFTを使ったスタンプラリーも面白そうです。このような取り組みは地方創生と親和性があると思っています。
長谷部さん そういう意味では地方創生ともつながりますが、AMLAD×NFTの観点で、デジタルアーカイブのコンテンツの保護に加えて、クリエイターや地方自治体、地域博物館が保有するコンテンツを流通させる仕組みを構築していき、デジタルの世界でマネタイズに繋げていくことができると望ましいですね。

最近は、XR技術によるバーチャル都市空間の構築にも取り組んでいます。地方の町をバーチャル空間に再現することで、人を集めるにはどのようなサービスを作るのがよいかを考えたり、抽象的なサービスイメージを段階的に具体化したりというような取り組みもしています。

今後の法規制の先行きやビジネス・サービスの展望

青柳さん Web3の世界の進展につれて、仲介者の役割が変化していくという考え方もあります。例えば仲介者として資金融通をビジネスの柱としてきたような既存の銀行や、不動産仲介業者のようなプレーヤーの役割は今後どのように変化していくのでしょうか。
桜井さん 仲介者的な役割は非常に小さくなっていくのではないでしょうか。近年DeFiが盛り上がっているように、ブロックチェーンなどを用いた分散型金融の仕組みは、技術的にはすでに実現しています。しかしながら、単純な金融取引ならともかく、不動産取引や複雑な資金調達プロジェクトなどについては実務的に考えるとまだまだ難しく、今後も何らかのかたちでプロデュースを担うプレーヤーが必要だと思います。
青柳さん なるほど。昨今、多くの金融機関が掲げるコンサルティング機能の強化といった考え方に近いですね。

ビジネス・サービスを展開する際には法規制を考慮することも重要ですが、Web3を取り巻く国内の法規制についてはどのように感じていますか。

原田さん 現時点では十分とは言えないですが、これから徐々に整備が進んでいくのだと思っています。当然過去にはなかった考え方なので、悩んだりすることは日々ありますし、専門家の協力を得たり知見を参考にすることも多いです。行政においても、新たな取り組みをしていこうという姿勢が見えますし、これまでのルールも踏まえつつ、整備がなされていくのではないでしょうか。
長谷部さん デジタルデータを公開するに当たり、コンテンツをどのように守っていくべきかを危惧している方も多いです。他方でNFTやブロックチェーンといった新たな技術を活用すれば、これまでになかったようなサービスを考えていくことができます。法規制の整備はこれからの課題ですが、ポテンシャルは広がっているとも思っています。
桜井さん 今後の新たな可能性という観点では、不動産業界においては、スマホによるデジタルな取引に付随して、家財保険や保証、融資やローン審査など、1つの取引がさまざまな商流に繋がり、広がっていきます。

金融機関はこうした商流に入り込むことで、いわゆるEmbedded Financeと呼ばれる領域に挑むことができます。取引の電子化・デジタル化に金融機能が加わるというのが大きなポイントですね。不動産業者が金融機能を実装したり、金融機関と連携してサービス提供したりするような未来が近づいていると感じています。
<プロフィール>

桜井 駿さん
株式会社デジタルベースキャピタル 代表パートナー
PropTech JAPAN Founder
みずほ証券、NTTデータ経営研究所を経てデジタルベースキャピタルを創業。日本初となるPropTech特化型ベンチャーキャピタルを運営し、銀行、不動産会社、メガベンチャー等から資金を預かり、不動産・金融・建設など規制産業領域のスタートアップへ投資を行う。1,400名以上が参加する不動産/建設領域のスタートアップコミュニティPropTechJAPANの設立、経済産業省新公共サービス検討会委員、一般社団法人Fintech協会の事務局長を歴任するなど、同領域へのエコシステム構築に携わる。
デジタルベースキャピタル(https://www.digitalbase.co.jp/

原田 尚基 さん
CryptoGames株式会社 法人事業部 事業部長
ITベンチャーにてエンジニアとしてキャリアをスタート、大手出版社、著名なゲームのサーバ設計・開発などを実施。その後、新規事業開発のコンサルティング会社にて大手上場企業に対して新規事業立ち上げを多数実施、またITベンチャー企業の役員として事業をグロース。現在はCryptoGamesにて法人事業部 事業部長を担当。技術知見・新規事業知見及び、Cryptoの知見を強みにコンサルティング等を提供。
CryptoGames(https://cryptogames.co.jp/

長谷部 旭陽 さん
株式会社NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部デジタルソリューション統括部 サービス企画担当 課長/ソリューション開発担当 課長
2008年NTTデータ入社後、官公庁向け大規模システム開発に従事。2012年から5年間はスイス・ジュネーブに赴任し、国連機関の情報システム部門に勤務。あわせてジュネーブ大学にて国際機関MBA修了。2017年よりNTTデータのデジタルアーカイブ事業「AMLAD」に携わる。
AMLAD(https://amlad.jp/

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ 金融イノベーション本部テクノロジー&イノベーション室 OSAイノベーションセンター 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人財戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery(https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。

新卒で銀行の業界団体に入職。金融機関や他業界団体等との折衝・調整に携わり、具体的には資金決済インフラや為替取引の制度運営に関する業務に従事した後、金利指標改革や市場規制の案件に関する業務等を幅広く経験。
その過程で、金融分野におけるNTTデータの影響力の大きさを実感したこと、社会を支える重要インフラを提供している点に魅力を感じたこと等をきっかけに、NTTデータへ中途入社。
現在は、金融業界のトレンドを、IT技術やビジネス、社会課題といった様々な切り口で調査・整理し発信する「金融版NTT DATA Technology Foresight」の取組み等に携わる。

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