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挑戦者と語る

専門家と語る企業DX!より一層DX人材の育成が肝になっていく未来へ

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テクノロジーの急速な発展につれて、あらゆる業界でデジタル技術を使った新たなビジネスモデルを展開するベンチャー企業が登場するなど、ゲームチェンジが起こっています。競争力の維持や強化のためにDX推進が求められる中、社会全体でDX人材が不足しており、自社人材の育成が喫緊の課題となっています。とはいえ、こういった課題に対応していくことは容易ではありません。実際に取り組んでみたもののあまり上手くいかないケースや、最初の一歩を踏み出せないという企業も多いのではないでしょうか。今回は、AI技術実装やDXコンサルティング、デジタル組織開発で企業DXの支援に取り組んでいる「AVILEN(アヴィレン)」の川村さんをお招きし、DX人材育成の現状や企業DXの将来などについて語り合いました!

本記事は、NTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2022年11月29日に開催したウェビナー「API gallery Meet UP ~Vol.12 “企業DX”~」のトークセッションの内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定は以下のリンクをご覧ください!

企業におけるDX推進にはDX人材育成が必要不可欠

青柳さん 競争力の維持や強化のためにあらゆる企業でDXの推進が必要と言われています。DXの文脈ではDX人材の重要性が語られることが多いですよね。DX人材と言ってもいろいろな種類があると思います。DXをうまく活用して企業の競争力を向上させるような人材は特に重要であり、社会全体で不足していると言われています。

DX人材にはITやデジタルのスキルももちろん重要ですが、それだけではなく、観察する力や人とつながる力、挑戦する力や質問する力といった基礎的なスキルや知識、マインドも重要です。

川村さん そうですね。DXという言葉が話題になって数年経ちましたが、課題の特定というような元々ビジネスマンに必要とされていたスキルやマインドは変わらず重要です。またデータ分析・活用をしていくにも、大前提としてビジネスの目的を確立させる必要があります。現代はそれに加えて、課題の特定やビジネスの目的を見つけた後には、テクノロジーを利用してどのように実現するかを考えることができる時代になりました。

特に最近はDX人材の育成が重要テーマになってきていると肌で感じています。当社では、AIアルゴリズム開発やDXコンサルティングをしつつ、お客様企業のDX人材育成にも取り組んでいます

青柳さん AVILENさんではどのようなコンセプトでDX人材の育成に取り組んでいるのですか。

川村さん DX人材育成については、AIやDXの基礎知識のない人、基礎知識をある程度持っている人、さらに実際にDX/データ活用推進を担っている人、といったスキルの層ごとに、それぞれ適切な内容・レベルでさまざまなコンテンツや研修を用意しています。

青柳さん いわゆるジェネラリストとスペシャリスト、それぞれのレベルに合わせて学習できるコンテンツや研修があるというのは魅力的ですね。

川村さん はい、ジェネラリスト向けには、AIやデータ活用によりどんなビジネスが実現できるのかといったことを学べるコンテンツを用意しています。これは基礎的な知識の習得や、お客様へどのような提案ができるかといったアイディア醸成に役立つと思います。

一方でエンジニアなどの技術系のスペシャリスト向けには、より専門的なコンテンツや研修を用意しています。いずれも、片手間ではなく本業としてDXを推進いただくための内容としています。

企業DXの現場!ユースケースや専門家の肌感覚を聞いてみた

青柳さん 企業のDXを支援されている中で、例えば業種・業態や企業規模などの属性により、企業が抱えている悩みや目的に違いなどはありますか。

川村さん そうですね、業界・業種、企業規模でも異なります。例えば金融機関では、入手できるデータが増加・拡大しており、データ自体をビジネスに活用していくことが必要という意識を持っている方が多いです。それをきっかけに社員のリテラシー向上を狙うケースも多いです。

またSIerでは、例えばシステムエンジニアの方にデータサイエンスの知識を身に付けてもらうことで、AI人材としての価値をさらに上げることを狙いとしているケースがあります。

青柳さん AVILENさんの協業先の中には行政機関もありますよね。そういった官公庁でもAIやDX人材育成に悩まれているのは興味深いなと思いました。

川村さん 少し前には、基本的にはどの企業でも、英語を使えるかどうかが重要視された時期がありましたよね。そのようなイメージで、今後はExcelを使うことは当然として、次の段階としてAIを何となく使えるようになる必要がある時代が来るのではないかと考えている方も多く、特に大企業で試行錯誤していることが多い印象です。

青柳さん 実際にAVILENさんが提供されているAIツールについても教えてくれますか。

川村さん 例えば当社では、食品工場における異物混入リスクを低減するために、作業員の清掃活動をAIで監督し、適切な清掃を誘導するシステム「AI Clean  Manager」を展開しています。あるコーヒーチェーン店様では工場におけるほこりなどの異物混入をどうやって防いでいくかという課題がありました。

清掃は神経質な方と大ざっぱな方で差が出てしまうため、AIで解決できないかというのが出発点でした。特徴としては、AIによる清掃確認ができること、手本動画を見ながら清掃ができること、清掃過程を録画・記録できることなどがあります。

川村さん また、Excelの操作により顧客行動で影響している要素の分析や結果予測ができる「AI Seed」というツールも展開しています。不動産企業や銀行などでご利用いただいておりますが、例えば、過去契約に至ったお客様や至らなかったお客様のデータを大量に投入することで、新しいお客様が契約してくださる可能性はどの程度かをAIにより算出できます。

「自社で使えるかどうか分からない」というお客様には、お試しでご利用いただくケースもあります。これはDXの内製化を実現するツールだと思っていて、こういったツールをきっかけにDX推進を試してみるというのも一つの入り口かと思っています。

大きな組織におけるDX推進の成功は組織体制に懸かっている

青柳さん AVILENさんは、日本郵政グループのDX推進などで注目されていますよね。巨大な組織だと、ITに詳しい人から全然詳しくない人、ITをなんとなく毛嫌いしている人までいろいろな方がいると思います。様々なレベルの社員がいる企業で社員にITリテラシーを身につけてもらい、DX推進人材となってもらうためにはどのような考え方が必要なのでしょうか。

川村さん 組織的な部分でいうと、大きな企業ほど意思決定に介在する人数が多くなります。そのため「DXに取り組む」という意思決定をどのように進めていくかが最初の課題になります。そこで誰かが「DXなんてやらなくていいのではないか」と言ってしまうとストップしてしまうので、全員でやっていくという社内のコンセンサスが重要になります。

DX人材が現場でDXを推進しようとしているときにそれを後押しできる体制や、リソースを割り当ててくれる体制があるかどうかが大事です。しっかりとした組織体制があるかどうかがポイントですね。

テクニカルな部分でいうと、社員全員が同じ教材・研修を学ぶのではなく、層によって学習コンテンツ・研修内容をある程度変える・分けることが大事だと思います。レベルや階層ごとに基礎的な内容が適当なのか応用的な内容が適当なのかを考慮することがポイントとなります。

青柳さん AIなどの仕組みの内製化に関して、金融機関や行政機関などは定期的な人事異動やローテーションがよくあり、引継ぎが難しそうな印象があります。ノウハウ蓄積が難しそうなイメージがありますが、その辺りご経験を通じた肌感覚としてはいかがでしょうか。

川村さん 金融機関などでは人事異動が定期的に行われますが、その一方で、DX人材は現状全然足りておらず、どんどん増やしていかないといけない状況です。企業内で配置換えなどがあった場合にはノウハウ継承が必要ですが、逆に、その人材が身につけた知識やスキルを、異動先でも発揮できるという利点があります。

青柳さん 例えば金融機関ではせっかくスキルを学んだ方が営業店に異動してしまうケースもありますが、裏を返すと、身に着けたスキルを異動先でも上手く使いこなして、営業効率化など現場でのAI活用やDX推進に取り組めるという考え方もありますよね。

川村さん その通りだと思います。現場の知識をインプットして、それを本部でのDXに活かすというケースも多いと思います。事務効率化などに取り組む際には、やはり現場の実務を知っていることが重要ですね。

AIを使えない人は取り残される時代が来る?リスキリングの重要性

青柳さん 今後はいわゆる一般事務の方の供給が過剰になっていき、一方でDXを推進できる人材が不足していくという予想がされている中で、近年はリスキリングというキーワードが流行しています。この点、AVILENさんはどのような取り組みをされていますか。

川村さん お客様企業内のリテラシー向上などを通じて、リスキリングのようなかたちでDX人材を育成することで、最終的にはお客様企業における仕組みの内製化のサポートにつなげられればと思っています。例えば製造業では自律型工場といった言葉がありますが、自社で分析・改善できるような内製化に取り組む企業も増えてきており、そのような支援をしていきたいと思っています。

青柳さん IT専門家でなくてもデータ活用などをできるようにするという観点だと、ノーコード・ローコードというキーワードを最近聞くことが増えましたが、企業DX専門家の視点ではどのように感じていますか。

川村さん 近年は、スペシャリストだけでなくジェネラリストが触れるツールがどんどん溢れてきています。ノーコード・ローコードに限らずですが、そのようなツールが増えていくことは、社会全体のベースレベル向上にとって重要なことです。

青柳さん 昔ExcelマクロなどのEUC(エンドユーザーコンピューティング)が流行り始めたのと同じような波なのかなと感じます。その点、例えばいわゆる野良マクロ(組織として管理しておらず現場などで社員が個別に作成・運用しているマクロ)については、異動などで仕組みが分からなくなってしまい、メンテナンスできなくなってしまうケースも多いと聞くので、その扱いも一つの課題かなと思いました。

川村さん 逆に言うと、将来的にはそのようなツールを使えるのがマストになっていき、それらを使うことができない人は世の中についていけないと言われてしまう時代が来るかもしれません。当社は、ExcelのUIで操作できる仕組みを含め、ある程度パッケージ化されたAIをどんどん作っていって、ユーザーの裾野を広げていきたいと思っています。

また、学習コンテンツや研修内容についても、さらに拡充していき、どんな狙い・目的であっても、どのようなレベルの方であっても役立つようなものを増やしていくことで、最終的には社会全体のDX人材の創出に貢献したいと思っています。
<プロフィール>

川村 真一 さん
AVILEN 事業開発責任者
業界最大手ハウスメーカーのマネージャーとして従事後、アメリカ、イギリス、中国を渡り歩き、現地での職務経験を積みながら経営学修士(MBA)を取得。その後、国内コンサルティングファームに所属し、コンサルティング事業部マネージャーに就任。東証1部上場企業から、地域密着の中小企業まで様々なコンサルティングを行う。2017年に、100人規模、創業50年の建設業企業にて取締役就任。同時に、フジサンケイグループのメディアと組み、インバウンドサービス企業を創業。その後、総合商社系データマーケティング企業に参画し、総合商社と全世界にあるグループ900社のDX化やデータマーケティング推進を行う。2022年にAVILENに参画し事業開発責任者に就任。
AVILEN(https://corp.avilen.co.jp/

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人財戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery(https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。

新卒で銀行の業界団体に入職。金融機関や他業界団体等との折衝・調整に携わり、具体的には資金決済インフラや為替取引の制度運営に関する業務に従事した後、金利指標改革や市場規制の案件に関する業務等を幅広く経験。
その過程で、金融分野におけるNTTデータの影響力の大きさを実感したこと、社会を支える重要インフラを提供している点に魅力を感じたこと等をきっかけに、NTTデータへ中途入社。
現在は、金融業界のトレンドを、IT技術やビジネス、社会課題といった様々な切り口で調査・整理し発信する「金融版NTT DATA Technology Foresight」の取組み等に携わる。

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