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新規事業開発を始めるなら!成功へのプロセスと必須スキル7選を押さえよう

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企業の衰退を防ぎ、さらに成長を続けていくために欠かせない新規事業開発。「ゼロからのスタートで成功の道筋が見えない」「やってみたけどうまくいかない理由がわからない」など、悩みはつきないものですよね。本記事では新規事業開発に携わるメンバーが押さえておきたい、成功までのプロセスや必須スキルなどについて解説します。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

新規事業開発とは

新規事業開発とは、未開拓のニーズや新たな顧客ニーズを見つけ、その企業がこれまでやっていなかった新しい事業・ビジネスをゼロから創り上げることを言います。例えば、本田技研工業株式会社の小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」は地上を走る車を作っていた会社が、空を飛ぶ飛行機を作った新規事業開発のよい例です。

新規事業開発と聞くと、ドラマチックなイメージを抱くかもしれません。しかしどんな企業・事業にも衰退するリスクがある以上、新しいことに挑戦する必要があり、むしろ泥臭く、根気よく続けていくものなのです。

新規事業開発には成功しやすいタイミングがある

新規事業に取り組むには、実はベストなタイミングあります。新規事業開発には資金・人材・時間を必要としますので、投資余力がないと取り組めません。既存事業が衰退フェーズに入った冬の時期では遅いのです。

かといって既存事業が絶好調の、いわば「夏」のタイミングで行うのも難しいもの。いけいけドンドンの事業に会社のリソースをつぎ込みますし、社員の意識も向かいがちだからです。

企業の業績の状況を四季に例えると、調子が上向きになり始めた春のタイミング、もしくは既存事業が豊かな実りをもたらす秋のタイミングが成功につながりやすい時期なのです。

新規事業開発に重要な3要素

千のうち三つしか成功しないと言われるほど、新規事業開発は難しいもの。こうすれば必ず成功する、という処方箋はどこにもありません。それでも多くの失敗と数少ない成功事例から導き出され、成功の再現性を高める三つの大切な要素があります。それは「マインドセット」「プロセス」「ツール」の3要素です。
  • マインドセット:単なる自己啓発にとどまらず、実践するための心構えや考え方。正解思考に捕らわれたり、失敗してはならないという強迫観念に陥ったりしない。守るべきところは守りつつも攻める姿勢を忘れない、自ら学び改革することを忘れてはなりません。
  • プロセス:いきなりアイデアを出すところから始めたり、上司への報告やプレゼンが目的となっているスケジュールで新規事業開発をしていませんか? 成功の再現性を、論理的に組み込んで構築したプロセスであることが重要です。
  • ツール:家を建てるには設計図やのこぎりといった道具がないとできないように、新規事業開発にも使われている多くのツールがあります。ただしツールだけで家は建たないように、使いこなすことの方がはるかに重要です。
新規事業開発では、これら三つの要素さえあれば、常に成功が再現できるわけではありません。しかしこれがなかったり、間違って使っていたりすることが、失敗の原因であることは枚挙にいとまがありません。

新規事業開発に必要な7つのスキル

新規事業開発に必要なスキルといっても、ベースになるのは普通に必要とされるビジネススキルと変わりません。新規事業アイデアの種を見つけるためには、マーケットをリサーチしたり、集めたデータを論理的に分析したりできなければならないためです。

新規事業開発では、その先のアイデアを産んで育てるアイディエーションがとりわけ重要になります。アイディエーションにおいてスキル以上に重要なのは、既存の常識に疑問をもち、新しい答えを探そうとするマインド。スキルを身につけるだけでなく、どのように使えばよいのかも併せてみていきましょう。

① データ収集力

新規事業開発を進めるためには、市場動向や顧客ニーズ、競合他社の動向など、多様なデータ・情報を収集する必要があります。今やインターネットやSNSを利用すれば一定量のデータ・情報を確保できますが、中には正確性に疑問が残るものも存在します。情報元の選定やデータ・情報を取捨選択できるスキルも磨きましょう。

② データを分析する論理的思考力

集めたデータに対して直感や感覚、先入観を排除し、筋道を立てて論理的に考え、矛盾・破綻のない結論を出す力が大切です。

複数のソースから集めたデータを無理に集計していないでしょうか? 自社にとって都合のよいデータだけを見ていないでしょうか? 論理的な分析力は新規事業の対象となるマーケットを正しく捉える上で、大切な基礎となる重要なスキルです。

ここまでの2つのスキルは、どんな事業でも必要な基礎。アイディエーションでは③以降のスキルが重要になってきます。

③ 常識に捕らわれない創造力

ゼロから新しい価値を生み出すには、アイデアを数多く出していく創造力が欠かせません。創造力は、既存の常識に疑問をもち、自問自答を繰り返して考えることで高まります。例えば集めたデータから顕在化された顧客のニーズがあったとして、
  1. それは本当のニーズなのか、その裏にもっと困っていることがあるのではないか、と疑ってみます
  2. 新しい困りごとを見いだしたならば、本当に困っているか改めてデータを集めます
  3. なぜ困ったままになっているのか考えます
過去にやろうとしてもうまくいかなかった、何か壁があったかもしれません。今なら新しい技術で可能かもしれません。考え続けると新しい何かが見つかります。それがアイディエーションに欠かせない創造力です。

④ アイデアを育てるファシリテーション力

組織で進める新規事業開発では、アイデアを出す人は必ずしもロジカルである必要はありません。ロジカルとは合理的で正確であるために、冷たく厳しいルールを順守する側面をもちます。そのため、束縛されずに自由にアイデアを発散させたいクリエイティブな状態とは相反してしまうからです。

アイディエーションではクリエイティブに120%集中できるように場をつくり、サポートするスキルと役割が大切で、そのサポート役がファシリテーターです。

サポート役となるファシリテーターは、新規事業開発の企画者やアイデアに悩む人を鼓舞したり、時には冷静さを求めながら、議論を生産的な方向に導き、新規事業開発を促進させる役目を担います。

ただし、ファシリテーターはクリエイティブなアイデアに共感しながらも、ロジカルに構築された新規事業開発のプロセスを進めるという、難しい役割を果たさなければなりません。論理と感情のバランスを取ることがとても大切になります。

⑤ 輪を形成するコミュニケーション力

ここで言う「輪」とは仲間と同義です。自分たちのやりたいことやユーザーに提供したい価値について、仲間たちの共感を形成するためには、コミュニケーション力が求められます。またアイディエーションを行うときは、他の人の意見を聞いてみることが突破口になることもあるでしょう。

⑥ 失敗を恐れない行動力

大企業によくあるのが、頭の中だけで新規事業に関するシミュレーションを行い、行動に移さないことです。たとえ行動して失敗したとしても、失敗を直視することで、そこから学ぶことは必ずあります。失敗から学べた方が自分事として新規事業に取り組め、成功の可能性はグンと高まるでしょう。

⑦ 魅力を伝えるプレゼン力

新規事業は新しくこれまでになかったがゆえに、その魅力や概要が想像できず、理解できない側面があります。一方で、チームメンバーや上司、最後には新規事業の顧客に魅力・概要をしっかり理解してもらえなければ事業になりません。そのためのプレゼン力は重要なスキルです。

相手が欲しい情報を論理的に構成して伝える能力、伝えたいことを相手の記憶に残す確かな言語化能力が、プレゼン力を高めます。

新規事業開発を成功に導くプロセス

新規事業開発を軌道に乗せるためにはどのようなプロセスを踏むとよいのでしょうか。ここでは6つのプロセスを順に解説します。

① 方針・目的・ミッションを決める

新規事業だから何でもあり!というわけにはいきません。まずは目的や方針を作り、それに基づいてチームを組成します。方針があるからこそ、ふさわしい人材を集め、チーム組成もうまくいくと言えるでしょう。

方針や目的を定めず、「まずはアイデア出しをしよう!」と見切り発車したチームは、後から収拾がつかなくなりがちです。ここで決めた方針・目的・ミッションは新規事業開発を進める上での大切なよりどころになります。迷ったときに立ち返る道を示す羅針盤の役目を果たしてくれるでしょう。

② 顧客と課題の明確化

どれだけ優れたサービス・プロダクトを考えついても、それらを求める人がいなければ、事業として成立しません。「顧客と課題の明確化」は、新規事業開発においてなくてはならないプロセスになります。その証左に、新規事業開発における失敗例では、大半のケースで「顧客と課題」が存在しないとも言われています。

③ アイデア創出(発散)

方針や目的を決め、顧客と課題が明確になると、その解決に集中できます。ようやくアイディエーションの出番というわけです。クリエイティブに100、と言わず300でも500でもアイデアをたくさん出し、発散させていきます。可能性を広げましょう。

自由奔放にアイデアを出すメンバーを導くには、ファシリテーターが必要です。アイデア創出の進め方のよりどころには、以下4つのパターンがあります。
  • アセットドリブン:提供価値や解決策から考えるアプローチ
  • マーケットドリブン:顧客の課題から考えるアプローチ
  • ビジョンドリブン:目指したい姿との差分から考えるアプローチ
  • ミッションドリブン:目指すべき姿との差分から考えるアプローチ
ファシリテーターはクリエイティブを120%引き出しつつ、顧客を思い出させ、目指す目的を忘れないように、冷静にアイデア創出を促進させます。

④ プロダクトの決定(収束)

新規事業開発では、アイデア創出ばかりに目が行きがちですが、適切な収束プロセスも重要です。アイデアに優先順位をつけて整理し、3~5程度に絞り込みます。「このアイデアはウケそうか?」「なぜこのアイデアに取り組みたいのか?」といったように、自分に問いかけて答えを探すことも、収束プロセスにおいて重要です。

⑤ プロトタイプ構築・データ検証

そもそも新規事業にはデータ(過去の実績)が存在しません。決定したプロダクトが成功するかどうかは未知数であるため、プロトタイプを構築し、それを顧客に提供してフィードバックをもらうことが重要です。このフィードバックの内容こそが、検証すべきデータになります。

⑥ 新規事業開発の終わり

十分な検証の結果、顧客にプロダクトを提供できると判断できれば、新規事業が開発できたと言えるでしょう。そうなるまでにプロトタイプから集めたデータを検証して、すばやくフィードバックし、納得いくまで⑤を繰り返します。

一方でいくら⑤を繰り返しても、①で設定した目的が達成できないことがわかったときは、撤退の判断をすることも重要です。避けるべきは、成功の見込みがないと明らかなのに、周囲に「失敗」と見なされることを恐れて、だらだらと続けてしまうことです。

目的がはっきりしているからこそ、到達できなない状況や理由がプロトタイプからのデータ検証によって論理的にクリアになり、失敗を納得して終わらせることができます。むしろ次の新しい新規事業開発への挑戦につながることでしょう。

新規事業開発に必要な2つのツール

新規事業開発においてツールは、アンチパターン(よくある失敗)にはまらず、成功の再現性を少しでも上げるために整備されたものです。「フレームワーク」や「メソッド」など、さまざまな紹介のされ方をしています。

ビジネスを進める上でフレームワークとは、さまざまな場面で繰り返し使える考え方や思考の枠組みを示したものです。一目で理解できるように、1枚の紙や一つの表で可視化されるように作られています。その多くは新規事業開発でも活用できます。

例えば一般的によく紹介されるSWOT分析やPEST分析などのフレームワークは、新規事業開発プロセスの①(方針・目的・ミッションの決定)と②(顧客と課題の明確化)で役立ちます。

フレームワークを埋めることを目的にせずに、自分たちの目的や進め方にあった用法用量を守って活用することが何より大切です。そうすればフレームワークは、あなたの新規事業開発を助ける重要な役目を果たしてくれるでしょう。本稿では「リーンキャンパス」を紹介します。

メソッドとは日本語で方法論、手法と訳されますが、ビジネスではより具体的で体系化されたやりかたを指す概念です。新規事業開発を体系化したメソッドは意外なことにあまりなく、本稿では「FORTH INNOVATION METHOD」を紹介します。

リーンキャンバス

何のお題もなく、真っ白なキャンバスに「絵を描きなさい」と言われたら困ってしまいますよね。リーンキャンバスは特にスタートアップ向けに、自分たちが考えた新規事業について、見通しよく説明できる(=絵を描ける)ようにサポートするフレームワークです。

具体的には、ビジネスモデルを以下9つの要素に分解し、ビジネスモデルの可視化・検証・改善するのに役立てます。
  1. 顧客の課題(Problem)
  2. 対象顧客(Customer Segments)
  3. 価値提案(Unique Value Proposition)
  4. 解決策(Solution)
  5. 顧客との接点(Channels)
  6. 収益の流れ(Revenue Streams)
  7. 費用構造(Cost Structure)
  8. 主要指標(Key Metrics)
  9. 参入障壁(Unfair Advantage)

FORTH INNOVATION METHOD (フォース・イノベーション・メソッド、以下FORTH)

オランダ人イノベーターのハイス・ファン・ウルフェン氏が開発し、体系化したイノベーション創出手法です。

最大の特徴は、「組織の力学」を考慮していることです。大組織になるほど上位層から現場の活動内容は見えにくいものですが、FORTHは定期的に上位層を巻き込み、合意を取りながらプロセスを進める設計になっています。メンバーも上位層も、常に納得感を得ながら検討を進められます。

イノベーションを、5つの島の冒険に見立てた構成もロジカルでユニークです。

  1. FULL STEAM AHEAD(全速前進でスタート!):チームメンバーを選出し、「イノベーションの使命」を作成・合意する
  2. OBSERVE & LEARN(観察と学び):イノベーション創出に必要な知識や情報について、机上調査に加えて観察やインタビューも行い、調査する
  3. RAISE IDEAS(アイデアを出す):アイデアを出し、初期のコンセプトを作成する
  4. TEST IDEAS(アイデアをテストする):創出したアイデアについて、顧客からのフィードバックをもらい、テストする
  5. HOMECOMING(帰還):顧客からのフィードバックを取り入れつつ、アイデア・ビジネスモデルをデザインする
FORTHについては、オクトノットにより詳しい記事があります。
新規事業開発に利用できるツールにはさまざまなものがありますが、ツールに優劣はありません。「これじゃなければいけない!」と宗教論争をするのではなく、自分たちに合うツールを上手に活用することが大切です。

まとめ

数々の試行錯誤を経て開発した「新規事業」も、いつしか「既存事業」になります。どのような事業にも衰退するリスクがある以上、企業は新規事業開発に継続的に取り組まなければなりません。

マインドセットを大切に、失敗に陥らないプロセスで、ツールを活用しながら、行動する勇気をもって、ぜひ新規事業開発成功の再現性を高めていきましょう
この記事を監修してくれたひと 西村 祐哉 さん

この記事を監修してくれたひと 西村 祐哉 さん

イノベーションエコシステムデザイナーを標榜し、新規事業創出における共創・伴走支援にとどまらないイノベーション人財育成や教育、組織や制度設計も包含した事業開発の構造そのものの創り手として活動。多くの講演や研修を通じて、イノベーションの理解促進にも努めている。ビジネスモデルイノベーション協会 理事
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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