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利用者・店舗におすすめのキャッシュレス決済は?まさに今、銀行が取り組むべきことも解説

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クレジットカード決済やデビットカード決済、QRコード決済など、さまざまな種類に分かれるキャッシュレス決済。「還元率が改悪されたから他のサービスを利用したい」「お客様がどのサービスを利用しているか分からない」などと思いながら、どのキャッシュレス決済を利用・導入すれば良いのか迷っている利用者・店舗も多いのではないでしょうか。また、多様なキャッシュレス決済が普及する中、銀行も今何をすべきか試行錯誤していることでしょう。そこで本記事では、利用者や店舗にとって、どのキャッシュレス決済が最適であり、おすすめなのかを深掘りしていきます。最後にはキャッシュレス決済の普及が進む現在において、銀行が着手すべきことについても提言しています。

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キャッシュレス決済とは

キャッシュレス決済は、経済産業省の資料「キャッシュレス決済の“いろは”」では以下の通り定義されています。
「キャッシュレス決済」とは、お札や小銭などの現金を使用せずにお金を払うことです。
具体的な決済手段には「クレジットカード」や「電子マネー」「QRコード決済」などがあります。キャッシュレス決済比率は増加傾向にあり、経済産業省によると2010年には13.2%だった同比率は、2022年には36.0%にまで上昇しています。
出典:2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました|経済産業省

経済産業省は「キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させる」ことを目指しており、国としてキャッシュレス決済の普及を推進していることが分かります。

なぜ国がキャッシュレス決済の普及を推し進めているのかは、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

キャッシュレス決済の主な種類と特徴

より具体的に、キャッシュレス決済の種類と特徴を見ていきましょう。

クレジットカード決済

クレジットカードで商品やサービスを購入する、日本で最も普及しているキャッシュレス決済手段です。経済産業省によると、2022年のキャッシュレス決済額が111兆円のうち、クレジットによる決済は93.8兆円に上ります。

クレジットカード決済の特徴は「後払い」。クレジット=信用という名の通り、個人の信用をもとに、利用者は購入代金を後払いする形となります。また利用額に応じてポイントが付与されたり、旅行傷害保険が付いていたりと、多様な付帯サービスがある点も特徴です。

デビットカード決済

デビットカードで商品・サービスを購入したタイミングで、購入金額が銀行口座から引き落とされる、即時払い式のキャッシュレス決済手段です。デビットカードには日本電子決済推進機構が提供する「J-Debit」および国際クレジットカードブランドが運営する「Visaデビット」「JCBデビット」などに分けられます。特長は以下の通りです。
  • 銀行預金残高までしか利用できないため、お金を使いすぎる心配がない
  • チャージ不要で支払いができる
  • 銀行口座があれば誰でも使え、クレジットカードのように信用調査がない

電子マネー決済

カードやスマートフォンに、事前に金額をチャージしておき、商品・サービス購入時にチャージ金額から支払う前払い式のキャッシュレス決済手段です。交通系電子マネーのSuicaやPASMO、流通系電子マネーのnanacoやWAONなどが有名です。特長は以下の通りです。
  • チャージ金額の上限は通常は数万円のため、紛失しても紛失額は限定される
  • タッチ方式で支払える形式がほとんどで、スピーディで手軽に決済できる
現金チャージがやや面倒というデメリットはあるものの、オートチャージやクレジットカードチャージを利用すれば、チャージの手間はなくなります。またクレジットカードといった異なる決済手段でチャージをすることで、ポイントの二重取りが可能といったメリットも生み出しています。チャージはイノベーションの宝庫ともいえるでしょう。

QRコード・バーコード決済

スマホのアプリ上より、QRコードやバーコードを用いて支払いを完了させる、キャッシュレス決済手段です。同決済手段では、スマホにクレジットカードや銀行口座などを登録した上で、決済を行います。PayPayやd払い、楽天ペイなどが有名です。近年に生まれて、特に決済比率が伸びている決済手段になります。

他の決済との最大の違いは、スマホが一つあれば決済できることです。クレジットカード、デビットカード、電子マネーは物理的なカードから始まっていますが、カメラでQRコード、バーコードを撮影するスマホアプリがあって初めて可能となりました。
逆にスマホがない、あっても電波が繋がらない、電池が切れると当たり前ですが使えないことも大きな特徴です。

キャッシュレス決済の3つの構成要素で分かる利用者にとっておすすめの決済手段

どのキャッシュレス決済手段が自身に合うのかを把握するためには、キャッシュレス決済の構造的な理解が不可欠です。ここでは、「キャッシュレス決済=クレジットカード決済やQRコード決済のことでしょ?」という理解から、もう一歩踏み込んでみましょう。

キャッシュレス決済は「支払いタイミング」「支払者確認手段」「電子的確認手段」の3要素で成り立つ構造をしています。

支払いタイミング

利用者がお金を支払うタイミングのこと。前払い・即時払い・後払いの3種類がある。

支払者確認手段

決済事業者が、支払う人が誰なのか認識する手段。決済事業者が前もって利用者を識別するために一意に発行した番号がカードやスマホアプリの形で渡されています。生体認証を使えば、こうしたカードやアプリも必要なくなるので、顔や指で支払うことも最近では可能になっています。

電子的確認手段

現金をやり取りしないキャッシュレス決済では、利用者とお店が電子的にやり取りする手段が必要になります。磁気ストライプは無くなりつつありますが、現在は接触・非接触ICチップをお店の端末で読み取る方式が主流です。
普及はしませんでしたが、WifiやBlutoothも技術や工夫次第でまた復活するかもしれません。QRコードという決して新しくはない技術が決済で使われたのはコロンブスの卵でした。利用者にとっては手ぶらでできる顔認証も、お店側はカメラを用意しないといけないのです。
3つの要素で分解してみると、これまで意識していなかったキャッシュレス決済のデジタル的な違いがよく見えてきますね
3つの要素の組み合わせ
支払いタイミング 前払い 即時払い 後払い
支払者確認手段 プラスチックカード スマートフォン、ウェアラブルデバイス 生体認証
電子的確認手段 磁気 接触・非接触IC、バーコード(QR) (新技術)

「3つの要素+α」から考える、おすすめのキャッシュレス決済

オクトノットがおすすめするのは「3つの要素」に分解して、自身の性格や生活に適したキャッシュレス決済手段を選ぶ、キャッシュレス決済が普及しつつある今ならではの、新しい選び方です。

自分で決めた予算内でお金のやりくりをしたい人は「前払い」にすれば、使いすぎの心配から解放されるでしょう。「たくさんのカードを持ち歩くのが嫌だ」という人は、スマホやウェアラブルデバイスを使えば、不格好な太った財布にサヨナラできます。

大事なことは、よくあるクレジットを選ぶか、QRコードを選ぶか、ではなく、自分が不満に思っていることが解消できるか?何を選べば自分がやりたいスマートで簡単な決済ができるかではないでしょうか。

ここ数年で多くの新しい決済サービスが始まり、利用者を集めるためにたくさんのキャンペーンが行われてきました。しかしある程度普及してくると、決済サービス事業者も必要が薄れキャンペーンを減らしてしまうもの。

そこで+αの要素として、自分の支払いがもっと便利でストレスなく使えるようになるのかどうかが、より大切になってきます。0.5%ポイントが高いからといって、ちょっと遠くのお店に行かなくてはならないのは不便ですよね?
<+αの要素例>
・普段利用する店舗や交通手段で使える決済手段なのかどうか
・子どもが親の銀行口座から支払う形になる場合、支払い上限設定や、柔軟なチャージができるかどうか

キャッシュレス決済の導入に悩むお店におすすめの選び方は?

キャッシュレス決済を導入する店舗側にとっては、どの決済手段の導入がおすすめなのでしょうか。

お店にやってくるお客様は、それぞれ自分に合ったさまざまな多くの決済手段を使いたくなるもの。ですから使えるようにしておく決済手段は多ければ多いに越したことはありません。理想はすべての決済手段が使えるようにしておくことです。そうすれば、お客様から「(この手段で払えないのであれば)じゃあやめます」と言われてしまうこともなくなります。

でもキャッシュレス決済は、それぞれの決済手段に応じた電子的確認手段を、お店が用意しておかなければなりません。それには導入のコストがかかるので、すべての決済手段を最初から導入しようとするのは現実的ではないでしょう。

そこでおすすめなのが、まずは試しにQRコード決済から始めることです。

まずはすぐに導入できるQRコード決済から

店舗掲示型のQRコード決済導入のメリットは、店舗側はQRコードが印刷された紙やステッカーを用意すれば始められる点です。専用の読み取り端末といった電子的確認手段をお店は用意する必要がありません。しかも利用者が自身のスマホでそのQRコードを読み取り、決済をしてくれますから、店舗側には通信費もかかりません。初期導入コストが限りなく0円で始められるのはQRコード決済だけの特徴です。

QRコード決済導入により、お客様や売り上げが増えたという効果が十分に確認できれば、カード決済もできるように、専用端末の導入を検討すると良いでしょう。クレジット、デビットに限らず、電子マネーも含めたたくさんの決済手段がありますが、さまざまな決済サービスを取りまとめて使えるようにしてくれる決済代行事業者という決済事業者もいますので、相談してみるのがおすすめです。

キャッシュレス決済がこれだけ進んだ今、銀行ができるようになったこととは

キャッシュレス決済比率は年々上昇しており、一過性のものではありません。キャッシュレス決済が広がりを見せる今、銀行はどんなキャッシュレス決済への対応をすればいいのでしょうか?

具体的には、こんなことが進んでいます。
  • これまではカードだけだった、自行の口座保有者向けの決済機能は、スマホアプリにも広がっている。
  • 多様な利用者やお店のニーズに答えるのは、自行だけではカバーしきれない。多くの決済サービス事業者が利用されるようになった今では、協力を進めることでより細かいニーズに答えられるようになっている。
  • 「前払い」「即時払い」「後払い」という決済タイミングは銀行が最も得意な分野。スマホアプリや決済サービス事業者と連携することで、給与前払いといった新たなサービスを信頼性の高い銀行口座から提供できるようになっている。
このように、銀行口座は以前よりずっと活性化しています。銀行APIの制度が整備され、さまざまな決済サービス事業者と連携できるようになった今では、“銀行口座をまるでお財布のように毎日使ってもらう”ことができるようになったと言えます

銀行アプリに支払い機能を搭載することで、口座の入出金は活発化し、決済事業者との提携を進めることで、利用者の購買履歴を含むデータの活用が可能になり、より有効なマーケティングができるようになっています。さらに「提携する決済事業者が増える=同事業者が銀行へ支払う接続料も増える」ことを意味するため、新たな銀行の収入にもつながっています。

このように、銀行は「口座保有者や店舗のキャッシュレス決済に関するニーズを満たしつつ、決済事業者とも連携を図る=キャッシュレス決済への対応を進める」ことで、より口座の活性化・収益増加を目指すことができるでしょう。

まとめ

さまざまな種類があるキャッシュレス決済。利用者は、支払いタイミング・媒体・読み取り端末技術の3要素に加え、自身の状況をよく踏まえた上で、決済手段を選ぶことが大切です。また店舗側については、まずはコストがほとんどかからないQRコード決済から始めるのがおすすめです。

銀行としては、普及が進むキャッシュレス決済について、対応を推進すべきでしょう。世界銀行によれば日本の銀行口座の保有率は2021年の時点で98.5%と、世界でも最も銀行口座が普及している国の一つです。特に、まとまった金額を預金できるのは銀行だけですし、その銀行口座から即時払いができるのは実はデビット決済しかありません。このようなアドバンテージを、銀行は活かさない手はないでしょう。

銀行は、今後さらなる隆盛が期待されるキャッシュレス決済への対応を積極的に進めることで、銀行口座をまるでお財布のように毎日使ってもらうようになることでしょう。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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