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FinTech(フィンテック)の基本をおさらい!意味や注目分野、展望などについて解説

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金融業界ではすっかり定着した感のある「FinTech(フィンテック)」という言葉。しかし「言葉はよく見かけるけれど、FinTechの意味や具体的なサービスはよく知らないな…」という方も意外と多いのではないでしょうか。そこで、本記事ではFinTechの意味や注目分野・具体的なサービスなど、FinTechの基本の「き」を解説します。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

FinTech(フィンテック)とは

FinTech(フィンテック)とはFinancial Technologyの略で、金融領域に新しいテクノロジーを結びつけることで生まれた新たな金融サービスを指します。身近な例としては、コロナ禍で感染による被害が広まる中で、お金に触らなくても決済ができる非接触技術を使った新しい決済サービスが世界中で大きく伸びました。
<FinTech企業とは>
最新の技術を用いて金融サービスを提供している企業を「FinTech企業」といいます。FinTech企業というと新しいベンチャー企業をイメージしがちですが、既存の金融機関でも、最新のテクノロジーを活用した金融サービスを提供していればFinTech企業と呼ばれています。

FinTechの歴史と背景

「FinTech」という用語は、米国で2000年代前半から使われていました。ただし、一般に広く認知され始めたのは2015年頃からです。FinTechへの多額の投資が報道されるようになったのもこの頃でしたし、日本でも2015年に一般社団法人Fintech協会が発足し、官民連携の機運が高まりました。
この時期にFinTechが普及した背景として、「リーマンショック」と「技術革新」の2つが考えられます。
・リーマンショック:2008年に大手投資銀行リーマン・ブラザースが経営破綻したことに端を発し、世界的な金融危機が起こりました。一般の利用者や企業において金融業界に対する不満が増加し、金融業界はその不満を解消すべく新たなサービスの開発・提供に注力するようになりました。
・技術革新:どうしても安心・安全が先に立ち、新しすぎる技術を採用しづらい金融業界でも活用できるテクノロジーが成熟し始めました。
<金融庁の方針転換もFinTech浸透の大きなポイント>
近年の金融庁は国民の財産を守り・増やすことを第一の目的に掲げ、新たなサービスの開発や展開を後押しする存在に。FinTech企業とも積極的に協議を重ね、日本におけるFinTechの普及をサポートしています。

FinTechに似ている●●●Tech語

FinTechと共に使われるようになった他の合成語についても、この際整理しておきましょう。いずれもFinTechからの派生ですが、より専門性を強調したい場合に使われます。
用語 概要
RegTech(レグテック) Regulatory Technologyを掛け合わせた造語。
「規制」に対応したり、活用したりする新しいテクノロジーやサービス
アンチマネーロンダリング
SupTech(スプテック) Supervisory Technologyを組み合わせた造語。
金融庁や財務省、中央銀行などの「監督」当局が活用するテクノロジー
市場モニタリングによるインサイダー取引の取り締まり
InnsureTech(インシュアテック) 「Insurance(保険)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語。
テクノロジーを用いた新しい保険サービス
車に取り付けたセンサーで日々の安全運転や事故連絡をサポートする自動車保険会社のサービス、等がある
WealthTech(ウェルステック) 「Wealth(富)」と 「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語。
富裕層向けの高度で専門的なサービスに端を発し、資産管理を多くの人に、より身近に提供するサービス
ロボアドバイザー

FinTechの注目分野

FinTechの分類方法にも様々なものがあります。
Octo Knot(オクトノット)では、実際にお金が活躍する「つかう」「ためる」「かりる」と、それらを総合する「みえる」の四つの分野で整理しました。
また、多くのFinTechが生まれては消えていきましたが、これまでの歴史上インパクトがあったり、今も残っていたりする例を特に取り上げて紹介します。

お金をつかう(決済、送金)

お金をつかう(決済や送金)分野では、キャッシュレス決済個人間送金などがFinTechに該当します。以下の例が今でも記憶に残っていたり、使われたりしているFinTechです。
・店頭支払い:お店が提示するQRコードか、買い物客が提示するQRコードをスキャンすることで、支払いを完了する(例:PayPay)
・個人間送金:小切手やATMに代わり、スマホから手軽に送金できる(例:PayPal、ことら、Venmo)
多くの人にとって、一番身近なのは支払い=決済でしょう。それだけに様々なサービスが生まれては消えてを繰り返してきました。例えば、PCがインターネットにつながっていれば、支払いや送金ができるPayPalの登場は、スマホがなかった時代において画期的なものでした。
また、スマホの普及に伴ってサービスも進化し、米国ではVenmoやCashAppが、日本でもPayPayがそれぞれ人気を博しています。

お金をためる(貯蓄、投資)

お金をためる(貯蓄、投資)分野には、例えば以下のFinTechのサービスがあります。
・Acorns:米国で“元祖”おつり投資を手掛けるサービス
・トラノコ:「おつり投資」や「ポイ活」など生活に密着した資産形成サービス
・finbee(自動貯金アプリ):カード払いの端数を「おつり貯金」ができるアプリ
・ウェルスナビ(WealthNavi):全自動の資産運用サービス
貯蓄や投資の分野は、決済に関するサービスほど一般的に認知されている、とは言えないのが実情です。
しかし、FinTech初期の米国では、おつりを自動的に貯めたり、投資したりすることで貯蓄や投資のハードルを下げるサービスが若者を中心とした数百万単位のユーザーの心をつかみ、人気を博しました。この分野では、AI(人工知能)の活用によって手間や時間を軽減してくれる「ロボアドバイザー」というサービスが有名です。
日本ではNISAの発足や老後資金2000万円問題などを契機に、投資への認知も一般に広まり始めました。投資に関するFinTechのサービスは、これから更に増えていくことでしょう。

お金をかりる(調達)

お金をかりる(調達)分野におけるFinTechのサービスとしては、「クラウドファンディング」や「ソーシャルレンディング」が有名です。クラウドやソーシャルといった言葉が使われていることからも分かる通り、進んだネット技術を活用して、借り手と貸し手を結びつけるサービスです。コロナ禍で資金調達に苦しむ人へのサービス提供や活用により、一躍脚光を浴びました。
・クラウドファンディング:購入や寄付といった形で、インターネット上で広く資金を集めるサービス(例:CAMPFIRE、Makuake)
・ソーシャルレンディング:融資を希望する借り手と投資目的でお金を貸したい貸し手をインターネット上でマッチングさせるサービス。クラウドファンディングの一種で、融資型クラウドファンディングとも呼ばれる(例:Bankers)
米国企業では、コロナ禍初期に消費者が地元のお店・企業を応援するギフトカードサービスを3日で立ち上げたKabbageも有名です。
また両サービスと金融機関との連携事例もあります。
例えば、クラウドファンディングサービスのMakuakeは金融機関と連携しています。Makuakeは金融機関より取引先企業の紹介を受ける一方、金融機関はファンの獲得・マーケティング・資金調達などのメリットを享受でき、正にWin-Winの連携が実現されています。

お金がみえる(管理)

FinTechのサービスの中でも、最も基本的かつ最初に取り上げられるようになったのが、お金がみえる(管理)分野です。同分野のサービスはPFM(Personal Financial Management:個人財務管理)と呼ばれています。
具体的なサービスとして、日本ではマネーフォワードfreeeがあります。この2社は日本発のFinTech企業として株式上場したことでも有名です。
PFMとはいわゆる家計簿ソフトですが、多くの銀行やカードから自動的に集計してくれることで、自分の手元で(今ならスマホで)いつでも資産状況が把握できるサービス、と現在では捉えられています。
PFMが世に出始めた背景として、2017年に米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した「アメリカの成人の40%は、いざというときのための貯蓄が400ドル以下」という調査結果がよく取り上げられます。400ドルといえば、日本円で約5万2,000円(1ドル=約130円で換算)です。このことから、お金の不安を抱えている人が多い世情がよくわかります。
そこまでお金に困っていないとしても、たくさんの通帳やカードの請求書をまとめて、自分の資産状況を把握できている人はどれだけいるでしょうか?
収支をまとめたり、集計したりする手間を軽減することで、まずは自身の家計や資産を簡単に見える化しなくてはならない、という課題意識から、PFMは他のFinTechのサービスに先駆けて生まれました。

FinTechで活用されているテクノロジー

FinTechに活用されているテクノロジーを5つ解説します。

ブロックチェーン

分散台帳技術の一つであるブロックチェーンは、参加者全員が各システムで取引データを検証し、情報を共有する分散型データの仕組みです。一連の取引をブロック(塊)としてつなげていくことから、ブロックチェーンと呼ばれています。
暗号資産(仮想通貨)であるビットコインを実現させるために発明された基幹技術です。中央銀行に管理されないビットコインの登場は衝撃的で、私たちに未来の通貨を予感させました。しかし、2022年に仮想通貨取引所大手のFTXが破綻したことも記憶に新しいように、まだまだ課題が多く残されています。
このほか、世界の中央銀行の約8割が導入を検討しているCBDC(Central Bank Digital Currency)の登場が、現在心待ちにされています。

API

API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアやWebサービスなどをつなぐ仕組みのことを指します。APIは、銀行の機能を外部に提供する「Embedded Finance」や「BaaS」を実現する手段としても知られています。
お金はこれまでと同様に規制と保険で守られた銀行に置きつつ、その銀行と安全に接続して貯めたり・使ったり・管理したりできる。そんな便利なサービスを実現する技術がAPIなのです。

インターフェース技術

インターフェース技術とは、異なる2つのシステムや機器などをつなぐ技術のことです。
お店とお客さんが支払いの目的や金額を伝える手段は絶えず進化しています。例えば紙幣やコインだって、昔は石や貝殻でした。
通貨以外の支払い方法で最も身近なクレジットカードも、磁気カードを専用装置で読み取って決済していたのは昔の話です。現在は、接触・非接触ICチップという高度なセキュリティを備えた決済端末の普及が進んでいます。
近年脚光を浴びたのは、専用の決済端末を準備しなくても、お店はバーコードやQRコードのステッカーを用意し、お客さんはスマホで撮影すれば支払いができる、いわゆるQRコード決済でした。これも新しいインターフェースのアイディアと技術です。
更に、より高度なインターフェース技術の活用により、指(静脈)や顔といった生体情報による決済が可能になりつつあります。スマートフォンすら持ち歩かず、身体一つで買い物ができる。そんな景色が一般的になる世界も、そう遠くないかもしれません。

AI(人工知能)

AI(Artificial Intelligence)は、金融機関が収集・蓄積した膨大なデータの解析に非常に役立つことから、FinTechのサービスでも活用が進んでいます。例えば、システムが投資助言や資産運用を行うロボアドバイザーにもAIは実装されています。
また、AIによる大量のトランザクション分析が可能になれば、不正検知や与信判断も効率化されることでしょう。大量の取引データをAIで分析し、与信判断に活用する「トランザクション・レンディング」という技術も実用化されつつあります。

生体認証

人間の身体的特徴をもとに本人を特定する「生体認証」も、FinTechのサービスでは重要な技術です。暗証番号やパスワードと比べても安全性が高く、個人情報の漏洩の心配が低くなります
<生体認証について>
・顔認証決済サービスを導入している事業体がある
・オンライン上で本人確認をすることで、スマートフォン一つで金融機関の口座開設が可能になる
生体認証は、利用者の負担を大幅に下げることができます。なお、オンライン上で電子的な方法を用いた本人確認(eKYC)については以下の記事でも触れていますので、こちらもぜひ参考にしてください。

FinTechをめぐる課題

最後に、FinTechのサービスを提供する上で考えられる課題を解説します。

安全確保と利便性・スピードの両立

FinTechのような便利で新しいサービスは、スピード感が重要です。一方、金融業界は安心・安全なサービスが問われる業界です。お金の取り扱いには常に不正利用との戦いがついて回るためです。そのため、安全の確保と利便性およびスピードの両立に気を配らなければなりません。

法規制への対応

FinTechのサービスを含む金融業を営むからには、法規制への対応が必須です。それだけに新規サービスを企画する人にとって高いハードルですが、FinTechに関連する法律には以下があること覚えておくだけでも、心理的なハードルは大きく下げられるでしょう。
・銀行法:100万円以上の資金を一時的にでも預かるサービスを提供したい場合には、銀行免許の取得が必須
・資金決済法(資金決済に関する法律):支払い・送金だけに特化するのであれば、銀行免許ではなく、資金決済事業者登録でよい。100万円までの取り扱いが一つの目安
・労働基準法:労働者へ給与振り込みをする場合には、労働基準法への対応が必須
労働基準法では、給与は原則現金支払いで、例外的に銀行口座への振り込みが認められています。
一方で、昨今の金融サービス拡充の流れから、資金決済法で認められている各種の決済サービスへの給与支払いについても議論がなされている最中です。
「FinTechのサービスを展開したいけど、法規制への対応がわからない」という場合は、もちろん法律家の助言を仰ぐべきですが、金融庁が設置している「FinTechサポートデスク」へ相談すれば、実際に許認可する監督官庁からの助言が直接得られるということは、実はあまり知られていないのかもしれません。活用して損はないでしょう。

FinTechがまだ一般に広く認知されていない

「FinTechという言葉は聞いたことがある。ただ、使ったことはない」という人は意外と多くいます。これは「大切なお金をFinTechという新しいサービスで使って大丈夫なのか」と心配に思う人が多くいるためと考えられます。
特に日本では、現金への絶対的信仰が強い傾向にあります。北海道からATMで送金すれば、その日のうちに沖縄に届く。つい最近までそのような国は少なく、現金の利便性が高いことが、信仰の強さの背景にはありました。
視点を変えると、金融機関としては、安心・安全を堅守しつつ、日本人の現金への強い信仰を乗り越えられる、これまでにはなかったような便利なFinTechのサービスを提供しなければならないのです。

FinTechが進む未来~今後の進化~

近年では、銀行にお金は預けているものの、スマートフォンでいつでも支払いができますよね。
またアプリを利用すれば友人に簡単に送金ができるため、支払いに困ることはありません。家族旅行に行くために旅行会社がディスカウントしてくれる積み立てサービスがあり、ふだんのお買い物で出たお釣りで無理なく貯金ができます。
少しお金を使いすぎると、アプリのロボットがやんわりとたしなめてくるのが玉に傷だけれど、おかげで無駄な支払いがなくなり、生活にも少し余裕が出てきました。
お金の不安は誰しもが持っているもの。FinTechとはその不安を解消し、お金の心配から自由になる未来を目指した、様々な技術やサービスのことなのです。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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